「Heroines' Fantasy〜」12・絢辻詞スキBEST『DESTINY』
〜Link My Little Lover「DESTINY」to 「絢辻詞」〜
「DESTINY」
・My Little Lover 3rd Album「NEW ADVENTURE」(1998.09.02 Release)
・11th Single (1998.05.13 Release)
・BEST Album「Singles」(2001.12.12 Release)
(※リンク先は公式ページ)
・歌詞(goo歌詞より)
多彩な魅力を放つシングル曲を精力的に出し続けたマイラバの活動がアルバム"NEW ADVENTURE"として一つの集大成を迎える、そのマイラバの音楽活動の絶頂期に(……といっても、売り上げの絶頂期とは重ならないと思うけど)出された、マイラバらしい透明感のある優しい歌声に、シンプルで強い言葉が乗ったこの曲を、僕は「ぼくうた〜My Little Lover&アマガミ〜Heroines' Fantasy〜」の十一曲目として
捧げる。
アイシテルって何だろう?
あなたは
何のために
生まれてきたの?
すれ違ってはいたのかもしれない
すれ違ってすらいなかったのかもしれない
だけど気がついたら
僕達は海の中
互いの姿を探し合って泳いでいる
運命はどこかにあって
気づこうと
気づくまいと
勝手に流れているものだけど
そんな運命の中に
飛び込むのは僕達
アイシテルって何だろう?
何気ない日常の積み重ねも
失ったものも
これから得るものも
何もかもが
今この瞬間のためにあるんだと
生まれてきたのは
あなたのためだと
信じることが
きっとそう
端的に言って、選曲の基準って。My Little Loverの中で、僕が一番好きな恋愛の曲だから……というと投げすぎだけど。これは、「絢辻さん」というキャラクターを表した曲では、正直言えばない。
ただ、何をどうということもなく。僕にとって、絢辻さんの「ぼくうた」は、DESTINYだった。
絢辻さんのスキBADを扱ったSS、小説〜絢辻詞スキBAD「あなたを探して」のまとめで書こうと思ってたけど。
あの時は何となくパスした妄想をここに書いて、絢辻さんの「ぼくうた」としたいと思う。
1.「私」「あたし」「わたし」〜そして、絢辻さんから見た橘さん〜
2.最も辛いイベント〜運命を知る絢辻さん〜
3.絢辻さんを信じることと、絢辻さんが信じること〜わたしを見つけてくれたのは誰なのか〜
4.依存と、信頼〜絢辻さんは、依存的なのだろうか〜
5.絢辻さんの存在理由〜絢辻さんが信じてくれるから〜
6.アマガミの、メインヒロイン〜絢辻さんのDESTINY〜
1.「私」「あたし」「わたし」〜そして、絢辻さんから見た橘さん〜
絢辻さんって、「私」「あたし」「わたし」と。三つの一人称を使い分けて。少しずつ彼女の心の奥に踏み込んでいくという解釈がよく取られていて、僕も概ねそういうことなんだろうと理解しているのだけれども。
それと同時に。
絢辻さんから見て橘さんはどう見えているのだろうということが、いつも気になっていた。
ナカヨシの絢辻さんの話は。橘純一のクリスマスへのトラウマを解消しましょう、というのが物語の主眼になっている。絢辻さんが、「あたし」を見せたことと。橘純一が、他人に隠していたトラウマを見せることが結びついて、互いの距離感が縮まる。
では、スキ√の絢辻さんは。
橘純一から、何を観たんだろう。
「あたし」→「わたし」と、自分のおそらく、もっとも弱く、そして。もっとも、見て欲しかった自分を見せようと決意するために。絢辻さんは、橘さんのことを信じて、自分の作り上げてきた世界を投げ打つんだけど。
それは、なぜなんだろう。絢辻さんは、橘さんの何を信じているんだろう。そんなことを、あのSSを書く前……ってことは、去年の初め頃からだけど、考えてた。
2.最も辛いイベント〜運命を知る絢辻さん〜
僕がアマガミで一番好きなイベントは、まあそりゃ間違いなく、七咲逢のスキBADの一連のイベントなんだけど。それはそれとして。一番"辛い"イベントは何だったかというと。絢辻さんのイベントだった。スキBAD、ではない。絢辻さん、スキ√(51/51)の。
絢辻さんのスキ√に進みながら、別の誰かとのスキ√に進んで。絢辻さんの☆を取らずに、別の誰かの☆を取って、他の誰かとクリスマスデートに行くことを選択した時の。一人繁華街を歩きながら絢辻さんが言い残す、捨て台詞。薫や七咲だとワゴンセールになる奴ですね。ちなみに、梨穂子も、多分あのイベントが最も落ち込んでいる。
あの時の絢辻さんの言葉。
必要な時だけ取り出されて、用が済めばしまわれる。
そんなの玩具と一緒じゃない……。
それとも、あたしなんてその程度なの?
…………
答えてよ、お願いだから……。
そう呟く絢辻さんが、一番辛いイベントだった。
あの場面には、橘純一はいない。
橘純一は、どこかで他の女の子とデートに行っているのだ。
声は届かないし、答えは、もうないのだ。
それを当然、絢辻さんは知っていて言ってる。
それは、些か以上に、芝居がかったセリフであって。
要するに醒めた読み方をすれば。作り手が、絢辻さんの口を使って言いたかった捨て台詞・言わせたかった台詞なだけなのかもしれないけれど。
些か以上に、違和感なく感情移入しながら二股プレイを楽しんでいた僕にとっては、あの台詞が、緩衝材たる橘純一を介さずに僕を直撃した。
絢辻さんが、さも。
「悪人としての橘純一」ではなくて。
「悪人としての橘純一としての僕」を、はっきりと認識しているように。
自分の生命が。
橘純一という少年から。
橘純一という、トラウマを抱えた少年のさらに向こう側にいる。
橘純一の皮を被って、コントローラーを握るプレーヤーに対して。
"捧げられたもの"であることを知っているかのように僕に響いた時。
アマガミにおいて、他の誰よりも、知性に溢れて。
アマガミにおいて、他の誰よりも、演技をすることに長けて。
アマガミにおいて、他の誰よりも、思うようにいかない過去を過ごして。
アマガミにおいて、他の誰よりも、人が人を見ることに、重い意味を見出してきた彼女の。
絢辻さんのスキBESTの言葉の意味が、重く感じられた。
「わたし、生まれてきて良かった」と。
3.絢辻さんを信じること・絢辻さんが信じること〜わたしを見つけてくれたのは誰なのか〜
いつもよく話している「ゆび先はもう一つの心臓」のオイサンと僕が昔、名古屋で出会って真夜中までお喋りした時、彼がこう言っていたのを思い出す。
内容は大体こんな感じだった(口調はもう少し穏やかだったけど、その分、強かった)
「いいですか。アマガミの絢辻さんにおいて大切なことは、彼女を信じるということなんです。彼女の家庭の真実は明かされていない。父親がどんな人間なのかも母親がどんな人間なのかも、絢辻さんの語る内容でしか分からない。もしかしたら嘘なのかも分からない。だけど、大切なことは、絢辻さんを信じることなんです」
と。
(そう言えば、オイサンはアマガミSS23話の感想でもそう言ってたな)
僕は必ずしもこれを、絢辻さんを愛するための「唯一解」とは思っていない。理由は単純で、アマガミはゲームだから、なーんも考えずに絢辻さんを「あーバカな女ー」と思いながらでもエンディングを迎えられるからだけど。
それはそうとして、彼の言葉の意味は僕にとって大きかった。絢辻さんの父親や母親がどんな人間で、絢辻さんのことをどう思っているのかは分からない。絢辻さんが姉を嫌うことと、縁さんが絢辻さんを思う気持ちの間に明らかに齟齬があるように。絢辻さんの持つコンプレックスも、あるいは、不運な、あるいは幼いすれ違いの積み重ねだったのかもしれない。だけど、そのどこかにあるかもしれない"事実"は、絢辻さんを愛する上で、あのアマガミの41日を絢辻さんと添い遂げる上で、大きな意味を持たない。
絢辻さんの後ろにどんなブラックボックスがブラックボックスのまま残っていようと。そして、逆にそこに、どんなプレーヤーにとって都合の良い"解"を当てはめようと。プレーヤーは絢辻さんと添い遂げられる。
それは、当たり前のことだ。もう一度言いますけど、それがアマガミというゲームの中にある彼女の運命なのだから。
そして、僕は。
それを当然のように。
逆のことだってあると、思った。
絢辻さんは、なぜ、プレーヤーたる橘純一が好きなのか、あまりはっきりとは言わない。容姿には触れない。成績にも、素行にもそんなには触れない。変わった人ね。と絢辻さんは言うけれど。彼女にとっては、「あたし」を知りながら逃げない、それだけで、変わったことなのである。別に彼の所作が変態的であることを指しているわけでは必ずしもない(ただし、「彼が奇抜な行動を取ることは、絢辻さんが彼を嫌う理由にならないこと」は対偶として間違いない)。
「誰も知らないわたしを見つけてくれた」こと。
それが、絢辻さんが、恋人に全てを委ねた理由として語られるのみであって。
それを、疑おうと疑うまいと。
プレーヤーが知ることができるのは、そこまでなのだ。
でも。「誰も知らないわたしを見つけた」のは。誰なのだろうか。
橘純一という少年が、会話の中で、絢辻さんという人間が「私」「あたし」のさらに奥に「わたし」がいると、アマガミの41日間の中で、知った描写は僕の知る限り、ない。ナカヨシのエンディングでは、彼が何となく、絢辻さんの「その奥」に気づいているような描写が語られるから、全く鈍感だったとも思わないけれど、スキBESTの絢辻さんが「誰も知らないわたしを見つけてくれた」と確信したことって。
一体、何なのだろうか。
彼が優しかったからなのだろうか。彼が自分と同じようにトラウマを抱えた人間だったからなのだろうか。単に、初恋に舞い上がる少女が、初めて仲良くできた男の子と一緒で楽しかったことを大袈裟に言っているだけなのだろうか。
答えは。プレーヤー一人一人が、胸の奥に持つ。
そして、絢辻さんは、「あなたがわたしを見つけてくれた」と、信じる。
「そこにいる"あなた"は、橘純一ではないんじゃないのか」
そう彼女が"思っていようといまいと"、絢辻さんは、そこにいる好きな男のために。
積み上げてきた過去を捨てて、白紙の未来を委ねる。
絢辻さんは、プレーヤー一人一人が、胸の奥に秘めた、「絢辻さんの、誰も見つけてくれることのなかったわたしとは何なのか」という答えを信じる。
それが、スキBESTの絢辻さんの、運命。
4.依存と、信頼〜絢辻さんは、依存的なのだろうか〜
絢辻さんが、男に対して依存している・いないということを、昔たまに匿名掲示板で話した。僕は、その問いに答えを出せない。
たとえば、七咲については、彼女は好きになった男性に対して依存的だと、思っている。七咲は、愛されるより愛したいタイプと自らが会話の中でも認める通りに、尽くすタイプであって。束縛するタイプであって。同時に、多少嫌なことでも、相手の言うことならば許してしまう(許すことが愛情表現だと思うような)タイプである。ある時はスキBADが物語るように。ある時は冬の寒い最中を目隠しで歩いてしまうような、突拍子のない彼の要望に応えてしまうことも。「仕方ありませんね」の一言で片付けてしまう。
亭主関白なら逢ですね、と高山氏自身が語る通りに。よき恋人であるために、自分が男の要望に対して応える人間なのだと思っている。
だけど、絢辻さんが果たしてそうなのかと言えば、やはりイマイチ分からないのだ。絢辻さんが、それこそ梨穂子や逢のように、橘さんの裏切りを許すかと言えば、やはり許さないのだ。裡沙ちゃんや、あるいは逢・梨穂子が仄めかすような。一緒にいられないことが、彼女にとっての絶望であるかのような依存は、絢辻さんから僕は感じない。
絢辻さんが交際後、男に対して従順な女性であるかと言えば、スキGOODあたりが示す通りに、やはり必ずしもそうではなくて。アマガミの41日間が示すような、"尻に敷く"タイプの交際関係である方がごく自然だと僕の目には映る。
絢辻さんは、尽くすタイプでも、尽くさないタイプ(尽くされるタイプ)でもなくて。スキGOODが仄めかすように、その時々で相手との関係の中で、互いにとって負担にならない"合理的な"バランスを探すんじゃないかなと思う。
だけど、そうでありながら、絢辻さんは、目の前の男を信じるのだ。
異様なまでに強く。
裡沙ちゃんの言葉を一人だけはね除けるように。
クラスメイトとしてはなるほど4月から半年程度の付き合いはあろうけど。
マトモに言葉を交わすようになってからはたかだか1ヶ月程度の。
猫を被っていた「あたし」がバレてからで言えば、たかだか3週間足らずしか経たない男に対して。
「生まれて良かった」とまで語るまでに。
まるでそれが、自分の運命であると確信するがように。
5.絢辻さんの存在理由〜絢辻さんが信じてくれるから〜
絢辻さんは、目の前にいる男を信じたのだ。たかだか41日、全てを知っているわけではなくても。「もしかしたら橘純一という男が、橘純一ではない別の人間なのかもしれなくても」
だから。
プレーヤーは。絢辻さんのことを、自在に、"信じることができる"。信じなくてはならない、とは別に思っていない。かくのごとくプレーヤーを信じた絢辻さんを裏切ることすらアマガミは許されるのだから。
ただ、どこまでも自在に信じることが出来る。
絢辻さんが。「誰も見つけてくれなかったわたしを見つけてくれたこと」。
根拠のないそのことだけをもって。
「今まで生きてきて良かった」と涙してくれるのだから。
「絢辻さんは、他の誰でもない。他ならぬ僕のために生まれてきてくれたんだ」と。
アマガミも。周りのことも。何もかも関係なく。
絢辻さんの前でそう言うことが許される。
それを、絢辻さんは、ピロートークやナンパの文句としてではなく。
本気の言葉として、受け入れてくれる。
だから。
何を恥じることもなく、言えばいいのだと思う。
過去も、未来も。
目の前にいる恋人のために白紙にした絢辻さんの前で。
橘純一は、僕でした、と。
僕が、貴方を見つけたんです、と。
あとは。ただ一つ。プレイヤーとしての橘さんが。
橘さんとしてのプレーヤーが。
恥じ気無く。過去を白紙にして。
未来を二人で作っていけるのか。
それだけのこと。
一言で言えば、「絢辻さんは俺の嫁」ということなんだけど、ね。
それをきちんと言い切れれば、それでいい。
後のことは、自由に作っていけばいい。
絢辻さんにとって、求めても手に入らなかった過去である家族のこととか。橘さんのために投げ打った過去を、もう一度回収しに行ったっていいと思う。絢辻さんを、アマガミという世界でもう一度、幸福なポジションに戻してあげることだってできると思う。あるいは絢辻さんはそうは言わないかも知れないけれど、プレーヤーがそこに対して真摯であるならば。絢辻さんが捨てたものを、尊重して。背負って。二人で、そこから先の見えない未来を一緒に生きてもいいと思う。
だけど。
語るのを辞めた時。
想うのを辞めた時。
絢辻さんの物語は、そこで終わる。
「きっとどこかで橘さんと幸せにやっているのだろう」と願っても。「どう幸せなのか」を。別にどれだけ抽象的でも断片的でも構わないけれど。プレーヤーがイメージできない限り、絢辻さんと橘さんの紡ぐ物語は、そこで断絶される。
それが、絢辻さんのスキBESTが、あの場所で断絶していることの意義なんだと思っている。
途切れた未来の先を。
橘純一に身を借りたプレーヤーが、絢辻さんと二人で作っていく。
「橘純一:プレーヤー」の比率は、多分、思うがままでいい。
(まあそりゃ、さ。すみません、実は私、橘純一じゃなくて中年親父でした、と言う世界はそうそうはないと思うけどさw)
アマガミという、エンターブレインの作った世界は。
スキBESTの絢辻さんにとって。あの41日で、終わる。
世界が終わって、そして。
絢辻さんは。来てくれるのだと思う。
プレーヤーの世界に。
次元だろうと何だろうと、飛び越えて。
だから、絢辻さんは。一度、過去を捨てる。
家族のことも何も解決しない。クラスで孤立したことも何も解決しない。
だから、絢辻さんは、それまで、橘さんと関係がなかった。クラスメイトではあったが、橘純一のことはおそらく意識されていなかった(※きっとしていたに違いないと思い込んでもいい。それを、絢辻さんは、"信じる"。)。いずれにせよ、橘純一の過去の記憶の中に絢辻詞という少女は何ら意味をなすものではなく。
ただ、アマガミの41日の中で。
惹かれ合って。捨てて。結ばれる。
仮面も何もない、白紙のままの絢辻さんが。
来いと手を引くなら、手を引かれるままに。
来てくれないかなとお願いすれば、仕方ないわねと毒づきながら。
行っていいかなと言えば、手を広げて。
"この世界の中で二人きり"なんていう。
そんな幻想すらも、二人で自在に作っていける。
それが、絢辻詞という少女が。
アマガミにいて。生きてきた意味なんだと、思ってる。
6.アマガミの、メインヒロイン〜絢辻さんのDESTINY〜
プレーヤーと絢辻さんが、自在に作っていける世界。それは絢辻さんのスキBESTについてだけのことでは別にないと思う。スキGOODだろうとナカヨシだろうと、スキBADだろうと同じだし。もちろん、絢辻さんに限ったことではない。他のヒロインだってそうだ。エンディングは、確実に、"ある"。だけど、あるもの以外は、やはり自在にプレーヤーが、ヒロインと二人で物語っていくべきものなのだと思う。
そして、それはぶっちゃけて言えば、ギャルゲー全体がそうだ。あや、別にギャルゲーでなくてもいい。例えばグローランサーやラングリッサーのような、ヒロインと結ばれるRPGだって。ヒロインは、主人公と共にあるために生を受けたと言い切ってしまえば、それでいいのだ。
ただ、絢辻さんが、分かりやすいのだ。
「私」と「橘純一」が惹かれ合い、「あたし」が「橘さんのトラウマ」をナカヨシで見つめたように。
「わたし」は、「橘純一のさらに奥にある存在、つまり、プレーヤー自身」を見つめているのではないか、と。そう信じやすい。
なぜならば。
二人の関係が、二人の過去の絆と無縁に。
ただ41日の間に強く激しく作られるから。
二人の関係が、将来に渡って何も約束されないから。
ただ、幸せな二人だけが、白紙の未来の上にぽつんと残されるから。
絢辻さんが、誰よりも強固に。
異様なまでに強固に、信じてくれるから。
絢辻さんが、仮面を纏っているから。
仮面を纏って生きていて。仮面の奥に辿り着くことを望む女の子だから。
そして、絢辻さんが、自分のことをよく知っているから。
哀しいと思えるほどに自分のことをよく知っているからこそ。
品行優良な完璧な優等生たる「私」の絢辻さんが。
自分に何となく優しくしてくれる、ちょっと変わった橘純一を見て。
打算と矜持と覚悟と……遊び心でいっぱいの「あたし」の絢辻さんが。
なるほど気弱で変態だけど、橘純一の心根の優しさに触れるように。
優しくて、寂しがり屋で、傷つきやすいけど……真っ直ぐで偽りのない「わたし」の絢辻さんが。
橘純一の、さらに奥にある、プレーヤーのことを、信じてくれる。
……と、僕は、絢辻さんのスキBESTを終えたその時。ごく当たり前のようにそう思っていて。絢辻さんが、アマガミの世界から、僕の世界に引き摺り出てきていたんだけど。そのことに、長く。もやもやしていた。言葉になかなかならなくて。とても長い時間がかかってしまったけれど。
ようやく書けたな、と。
アマガミをプレイしていて。たくさんの人と知り合う中で、気づいた。この感覚は別に僕だけの特別な感覚ではない。当たり前のように、彼女達は、プレーヤーの隣に、いる。恥じることなく言っていいのだ。
彼女は、僕と一緒になる運命だったんだ、と。
「アマガミは現実」とは、僕にとっては、そういうこと。
くどいけど、別にそれは絢辻さんである必然性は、当然ない。
ただ、絢辻さんが放つメッセージが、一番ストレートではあると思う。
そして。愛してる。その気持ちだけで、たとえ世界が終わっても、今を作っていける。確信に満ちた、マイラバの「DESTINY」が、僕にとって、絢辻さんの、スキBESTの「ぼくうた」であって。
僕の見解として、はっきりと。
絢辻さんが、アマガミのメインヒロインだ。
そう書き残しておきたいと思う。
絢辻さんのスキBESTこそが。
僕にとって、アマガミを体現しているんです。
・「Heroines' Real」02・絢辻詞スキBAD『サテライト』に進む
・「Heroines' Fantasy」13・エピローグof"Fantasy"『evergreen』に進む
・「Heroines' Fantasy」11・BAD END『FANTASY』に戻る
・「ぼくうた〜My Little Lover&アマガミ〜」目次に戻る
・My Little Lover 公式サイト(音が流れます)
「DESTINY」
・My Little Lover 3rd Album「NEW ADVENTURE」(1998.09.02 Release)
・11th Single (1998.05.13 Release)
・BEST Album「Singles」(2001.12.12 Release)
(※リンク先は公式ページ)
・歌詞(goo歌詞より)
多彩な魅力を放つシングル曲を精力的に出し続けたマイラバの活動がアルバム"NEW ADVENTURE"として一つの集大成を迎える、そのマイラバの音楽活動の絶頂期に(……といっても、売り上げの絶頂期とは重ならないと思うけど)出された、マイラバらしい透明感のある優しい歌声に、シンプルで強い言葉が乗ったこの曲を、僕は「ぼくうた〜My Little Lover&アマガミ〜Heroines' Fantasy〜」の十一曲目として
捧げる。
アイシテルって何だろう?
あなたは
何のために
生まれてきたの?
すれ違ってはいたのかもしれない
すれ違ってすらいなかったのかもしれない
だけど気がついたら
僕達は海の中
互いの姿を探し合って泳いでいる
運命はどこかにあって
気づこうと
気づくまいと
勝手に流れているものだけど
そんな運命の中に
飛び込むのは僕達
アイシテルって何だろう?
何気ない日常の積み重ねも
失ったものも
これから得るものも
何もかもが
今この瞬間のためにあるんだと
生まれてきたのは
あなたのためだと
信じることが
きっとそう
端的に言って、選曲の基準って。My Little Loverの中で、僕が一番好きな恋愛の曲だから……というと投げすぎだけど。これは、「絢辻さん」というキャラクターを表した曲では、正直言えばない。
ただ、何をどうということもなく。僕にとって、絢辻さんの「ぼくうた」は、DESTINYだった。
絢辻さんのスキBADを扱ったSS、小説〜絢辻詞スキBAD「あなたを探して」のまとめで書こうと思ってたけど。
あの時は何となくパスした妄想をここに書いて、絢辻さんの「ぼくうた」としたいと思う。
1.「私」「あたし」「わたし」〜そして、絢辻さんから見た橘さん〜
2.最も辛いイベント〜運命を知る絢辻さん〜
3.絢辻さんを信じることと、絢辻さんが信じること〜わたしを見つけてくれたのは誰なのか〜
4.依存と、信頼〜絢辻さんは、依存的なのだろうか〜
5.絢辻さんの存在理由〜絢辻さんが信じてくれるから〜
6.アマガミの、メインヒロイン〜絢辻さんのDESTINY〜
1.「私」「あたし」「わたし」〜そして、絢辻さんから見た橘さん〜
絢辻さんって、「私」「あたし」「わたし」と。三つの一人称を使い分けて。少しずつ彼女の心の奥に踏み込んでいくという解釈がよく取られていて、僕も概ねそういうことなんだろうと理解しているのだけれども。
それと同時に。
絢辻さんから見て橘さんはどう見えているのだろうということが、いつも気になっていた。
ナカヨシの絢辻さんの話は。橘純一のクリスマスへのトラウマを解消しましょう、というのが物語の主眼になっている。絢辻さんが、「あたし」を見せたことと。橘純一が、他人に隠していたトラウマを見せることが結びついて、互いの距離感が縮まる。
では、スキ√の絢辻さんは。
橘純一から、何を観たんだろう。
「あたし」→「わたし」と、自分のおそらく、もっとも弱く、そして。もっとも、見て欲しかった自分を見せようと決意するために。絢辻さんは、橘さんのことを信じて、自分の作り上げてきた世界を投げ打つんだけど。
それは、なぜなんだろう。絢辻さんは、橘さんの何を信じているんだろう。そんなことを、あのSSを書く前……ってことは、去年の初め頃からだけど、考えてた。
2.最も辛いイベント〜運命を知る絢辻さん〜
僕がアマガミで一番好きなイベントは、まあそりゃ間違いなく、七咲逢のスキBADの一連のイベントなんだけど。それはそれとして。一番"辛い"イベントは何だったかというと。絢辻さんのイベントだった。スキBAD、ではない。絢辻さん、スキ√(51/51)の。
絢辻さんのスキ√に進みながら、別の誰かとのスキ√に進んで。絢辻さんの☆を取らずに、別の誰かの☆を取って、他の誰かとクリスマスデートに行くことを選択した時の。一人繁華街を歩きながら絢辻さんが言い残す、捨て台詞。薫や七咲だとワゴンセールになる奴ですね。ちなみに、梨穂子も、多分あのイベントが最も落ち込んでいる。
あの時の絢辻さんの言葉。
必要な時だけ取り出されて、用が済めばしまわれる。
そんなの玩具と一緒じゃない……。
それとも、あたしなんてその程度なの?
…………
答えてよ、お願いだから……。
そう呟く絢辻さんが、一番辛いイベントだった。
あの場面には、橘純一はいない。
橘純一は、どこかで他の女の子とデートに行っているのだ。
声は届かないし、答えは、もうないのだ。
それを当然、絢辻さんは知っていて言ってる。
それは、些か以上に、芝居がかったセリフであって。
要するに醒めた読み方をすれば。作り手が、絢辻さんの口を使って言いたかった捨て台詞・言わせたかった台詞なだけなのかもしれないけれど。
些か以上に、違和感なく感情移入しながら二股プレイを楽しんでいた僕にとっては、あの台詞が、緩衝材たる橘純一を介さずに僕を直撃した。
絢辻さんが、さも。
「悪人としての橘純一」ではなくて。
「悪人としての橘純一としての僕」を、はっきりと認識しているように。
自分の生命が。
橘純一という少年から。
橘純一という、トラウマを抱えた少年のさらに向こう側にいる。
橘純一の皮を被って、コントローラーを握るプレーヤーに対して。
"捧げられたもの"であることを知っているかのように僕に響いた時。
アマガミにおいて、他の誰よりも、知性に溢れて。
アマガミにおいて、他の誰よりも、演技をすることに長けて。
アマガミにおいて、他の誰よりも、思うようにいかない過去を過ごして。
アマガミにおいて、他の誰よりも、人が人を見ることに、重い意味を見出してきた彼女の。
絢辻さんのスキBESTの言葉の意味が、重く感じられた。
「わたし、生まれてきて良かった」と。
3.絢辻さんを信じること・絢辻さんが信じること〜わたしを見つけてくれたのは誰なのか〜
いつもよく話している「ゆび先はもう一つの心臓」のオイサンと僕が昔、名古屋で出会って真夜中までお喋りした時、彼がこう言っていたのを思い出す。
内容は大体こんな感じだった(口調はもう少し穏やかだったけど、その分、強かった)
「いいですか。アマガミの絢辻さんにおいて大切なことは、彼女を信じるということなんです。彼女の家庭の真実は明かされていない。父親がどんな人間なのかも母親がどんな人間なのかも、絢辻さんの語る内容でしか分からない。もしかしたら嘘なのかも分からない。だけど、大切なことは、絢辻さんを信じることなんです」
と。
(そう言えば、オイサンはアマガミSS23話の感想でもそう言ってたな)
僕は必ずしもこれを、絢辻さんを愛するための「唯一解」とは思っていない。理由は単純で、アマガミはゲームだから、なーんも考えずに絢辻さんを「あーバカな女ー」と思いながらでもエンディングを迎えられるからだけど。
それはそうとして、彼の言葉の意味は僕にとって大きかった。絢辻さんの父親や母親がどんな人間で、絢辻さんのことをどう思っているのかは分からない。絢辻さんが姉を嫌うことと、縁さんが絢辻さんを思う気持ちの間に明らかに齟齬があるように。絢辻さんの持つコンプレックスも、あるいは、不運な、あるいは幼いすれ違いの積み重ねだったのかもしれない。だけど、そのどこかにあるかもしれない"事実"は、絢辻さんを愛する上で、あのアマガミの41日を絢辻さんと添い遂げる上で、大きな意味を持たない。
絢辻さんの後ろにどんなブラックボックスがブラックボックスのまま残っていようと。そして、逆にそこに、どんなプレーヤーにとって都合の良い"解"を当てはめようと。プレーヤーは絢辻さんと添い遂げられる。
それは、当たり前のことだ。もう一度言いますけど、それがアマガミというゲームの中にある彼女の運命なのだから。
そして、僕は。
それを当然のように。
逆のことだってあると、思った。
絢辻さんは、なぜ、プレーヤーたる橘純一が好きなのか、あまりはっきりとは言わない。容姿には触れない。成績にも、素行にもそんなには触れない。変わった人ね。と絢辻さんは言うけれど。彼女にとっては、「あたし」を知りながら逃げない、それだけで、変わったことなのである。別に彼の所作が変態的であることを指しているわけでは必ずしもない(ただし、「彼が奇抜な行動を取ることは、絢辻さんが彼を嫌う理由にならないこと」は対偶として間違いない)。
「誰も知らないわたしを見つけてくれた」こと。
それが、絢辻さんが、恋人に全てを委ねた理由として語られるのみであって。
それを、疑おうと疑うまいと。
プレーヤーが知ることができるのは、そこまでなのだ。
でも。「誰も知らないわたしを見つけた」のは。誰なのだろうか。
橘純一という少年が、会話の中で、絢辻さんという人間が「私」「あたし」のさらに奥に「わたし」がいると、アマガミの41日間の中で、知った描写は僕の知る限り、ない。ナカヨシのエンディングでは、彼が何となく、絢辻さんの「その奥」に気づいているような描写が語られるから、全く鈍感だったとも思わないけれど、スキBESTの絢辻さんが「誰も知らないわたしを見つけてくれた」と確信したことって。
一体、何なのだろうか。
彼が優しかったからなのだろうか。彼が自分と同じようにトラウマを抱えた人間だったからなのだろうか。単に、初恋に舞い上がる少女が、初めて仲良くできた男の子と一緒で楽しかったことを大袈裟に言っているだけなのだろうか。
答えは。プレーヤー一人一人が、胸の奥に持つ。
そして、絢辻さんは、「あなたがわたしを見つけてくれた」と、信じる。
「そこにいる"あなた"は、橘純一ではないんじゃないのか」
そう彼女が"思っていようといまいと"、絢辻さんは、そこにいる好きな男のために。
積み上げてきた過去を捨てて、白紙の未来を委ねる。
絢辻さんは、プレーヤー一人一人が、胸の奥に秘めた、「絢辻さんの、誰も見つけてくれることのなかったわたしとは何なのか」という答えを信じる。
それが、スキBESTの絢辻さんの、運命。
4.依存と、信頼〜絢辻さんは、依存的なのだろうか〜
絢辻さんが、男に対して依存している・いないということを、昔たまに匿名掲示板で話した。僕は、その問いに答えを出せない。
たとえば、七咲については、彼女は好きになった男性に対して依存的だと、思っている。七咲は、愛されるより愛したいタイプと自らが会話の中でも認める通りに、尽くすタイプであって。束縛するタイプであって。同時に、多少嫌なことでも、相手の言うことならば許してしまう(許すことが愛情表現だと思うような)タイプである。ある時はスキBADが物語るように。ある時は冬の寒い最中を目隠しで歩いてしまうような、突拍子のない彼の要望に応えてしまうことも。「仕方ありませんね」の一言で片付けてしまう。
亭主関白なら逢ですね、と高山氏自身が語る通りに。よき恋人であるために、自分が男の要望に対して応える人間なのだと思っている。
だけど、絢辻さんが果たしてそうなのかと言えば、やはりイマイチ分からないのだ。絢辻さんが、それこそ梨穂子や逢のように、橘さんの裏切りを許すかと言えば、やはり許さないのだ。裡沙ちゃんや、あるいは逢・梨穂子が仄めかすような。一緒にいられないことが、彼女にとっての絶望であるかのような依存は、絢辻さんから僕は感じない。
絢辻さんが交際後、男に対して従順な女性であるかと言えば、スキGOODあたりが示す通りに、やはり必ずしもそうではなくて。アマガミの41日間が示すような、"尻に敷く"タイプの交際関係である方がごく自然だと僕の目には映る。
絢辻さんは、尽くすタイプでも、尽くさないタイプ(尽くされるタイプ)でもなくて。スキGOODが仄めかすように、その時々で相手との関係の中で、互いにとって負担にならない"合理的な"バランスを探すんじゃないかなと思う。
だけど、そうでありながら、絢辻さんは、目の前の男を信じるのだ。
異様なまでに強く。
裡沙ちゃんの言葉を一人だけはね除けるように。
クラスメイトとしてはなるほど4月から半年程度の付き合いはあろうけど。
マトモに言葉を交わすようになってからはたかだか1ヶ月程度の。
猫を被っていた「あたし」がバレてからで言えば、たかだか3週間足らずしか経たない男に対して。
「生まれて良かった」とまで語るまでに。
まるでそれが、自分の運命であると確信するがように。
5.絢辻さんの存在理由〜絢辻さんが信じてくれるから〜
絢辻さんは、目の前にいる男を信じたのだ。たかだか41日、全てを知っているわけではなくても。「もしかしたら橘純一という男が、橘純一ではない別の人間なのかもしれなくても」
だから。
プレーヤーは。絢辻さんのことを、自在に、"信じることができる"。信じなくてはならない、とは別に思っていない。かくのごとくプレーヤーを信じた絢辻さんを裏切ることすらアマガミは許されるのだから。
ただ、どこまでも自在に信じることが出来る。
絢辻さんが。「誰も見つけてくれなかったわたしを見つけてくれたこと」。
根拠のないそのことだけをもって。
「今まで生きてきて良かった」と涙してくれるのだから。
「絢辻さんは、他の誰でもない。他ならぬ僕のために生まれてきてくれたんだ」と。
アマガミも。周りのことも。何もかも関係なく。
絢辻さんの前でそう言うことが許される。
それを、絢辻さんは、ピロートークやナンパの文句としてではなく。
本気の言葉として、受け入れてくれる。
だから。
何を恥じることもなく、言えばいいのだと思う。
過去も、未来も。
目の前にいる恋人のために白紙にした絢辻さんの前で。
橘純一は、僕でした、と。
僕が、貴方を見つけたんです、と。
あとは。ただ一つ。プレイヤーとしての橘さんが。
橘さんとしてのプレーヤーが。
恥じ気無く。過去を白紙にして。
未来を二人で作っていけるのか。
それだけのこと。
一言で言えば、「絢辻さんは俺の嫁」ということなんだけど、ね。
それをきちんと言い切れれば、それでいい。
後のことは、自由に作っていけばいい。
絢辻さんにとって、求めても手に入らなかった過去である家族のこととか。橘さんのために投げ打った過去を、もう一度回収しに行ったっていいと思う。絢辻さんを、アマガミという世界でもう一度、幸福なポジションに戻してあげることだってできると思う。あるいは絢辻さんはそうは言わないかも知れないけれど、プレーヤーがそこに対して真摯であるならば。絢辻さんが捨てたものを、尊重して。背負って。二人で、そこから先の見えない未来を一緒に生きてもいいと思う。
だけど。
語るのを辞めた時。
想うのを辞めた時。
絢辻さんの物語は、そこで終わる。
「きっとどこかで橘さんと幸せにやっているのだろう」と願っても。「どう幸せなのか」を。別にどれだけ抽象的でも断片的でも構わないけれど。プレーヤーがイメージできない限り、絢辻さんと橘さんの紡ぐ物語は、そこで断絶される。
それが、絢辻さんのスキBESTが、あの場所で断絶していることの意義なんだと思っている。
途切れた未来の先を。
橘純一に身を借りたプレーヤーが、絢辻さんと二人で作っていく。
「橘純一:プレーヤー」の比率は、多分、思うがままでいい。
(まあそりゃ、さ。すみません、実は私、橘純一じゃなくて中年親父でした、と言う世界はそうそうはないと思うけどさw)
アマガミという、エンターブレインの作った世界は。
スキBESTの絢辻さんにとって。あの41日で、終わる。
世界が終わって、そして。
絢辻さんは。来てくれるのだと思う。
プレーヤーの世界に。
次元だろうと何だろうと、飛び越えて。
だから、絢辻さんは。一度、過去を捨てる。
家族のことも何も解決しない。クラスで孤立したことも何も解決しない。
だから、絢辻さんは、それまで、橘さんと関係がなかった。クラスメイトではあったが、橘純一のことはおそらく意識されていなかった(※きっとしていたに違いないと思い込んでもいい。それを、絢辻さんは、"信じる"。)。いずれにせよ、橘純一の過去の記憶の中に絢辻詞という少女は何ら意味をなすものではなく。
ただ、アマガミの41日の中で。
惹かれ合って。捨てて。結ばれる。
仮面も何もない、白紙のままの絢辻さんが。
来いと手を引くなら、手を引かれるままに。
来てくれないかなとお願いすれば、仕方ないわねと毒づきながら。
行っていいかなと言えば、手を広げて。
"この世界の中で二人きり"なんていう。
そんな幻想すらも、二人で自在に作っていける。
それが、絢辻詞という少女が。
アマガミにいて。生きてきた意味なんだと、思ってる。
6.アマガミの、メインヒロイン〜絢辻さんのDESTINY〜
プレーヤーと絢辻さんが、自在に作っていける世界。それは絢辻さんのスキBESTについてだけのことでは別にないと思う。スキGOODだろうとナカヨシだろうと、スキBADだろうと同じだし。もちろん、絢辻さんに限ったことではない。他のヒロインだってそうだ。エンディングは、確実に、"ある"。だけど、あるもの以外は、やはり自在にプレーヤーが、ヒロインと二人で物語っていくべきものなのだと思う。
そして、それはぶっちゃけて言えば、ギャルゲー全体がそうだ。あや、別にギャルゲーでなくてもいい。例えばグローランサーやラングリッサーのような、ヒロインと結ばれるRPGだって。ヒロインは、主人公と共にあるために生を受けたと言い切ってしまえば、それでいいのだ。
ただ、絢辻さんが、分かりやすいのだ。
「私」と「橘純一」が惹かれ合い、「あたし」が「橘さんのトラウマ」をナカヨシで見つめたように。
「わたし」は、「橘純一のさらに奥にある存在、つまり、プレーヤー自身」を見つめているのではないか、と。そう信じやすい。
なぜならば。
二人の関係が、二人の過去の絆と無縁に。
ただ41日の間に強く激しく作られるから。
二人の関係が、将来に渡って何も約束されないから。
ただ、幸せな二人だけが、白紙の未来の上にぽつんと残されるから。
絢辻さんが、誰よりも強固に。
異様なまでに強固に、信じてくれるから。
絢辻さんが、仮面を纏っているから。
仮面を纏って生きていて。仮面の奥に辿り着くことを望む女の子だから。
そして、絢辻さんが、自分のことをよく知っているから。
哀しいと思えるほどに自分のことをよく知っているからこそ。
品行優良な完璧な優等生たる「私」の絢辻さんが。
自分に何となく優しくしてくれる、ちょっと変わった橘純一を見て。
打算と矜持と覚悟と……遊び心でいっぱいの「あたし」の絢辻さんが。
なるほど気弱で変態だけど、橘純一の心根の優しさに触れるように。
優しくて、寂しがり屋で、傷つきやすいけど……真っ直ぐで偽りのない「わたし」の絢辻さんが。
橘純一の、さらに奥にある、プレーヤーのことを、信じてくれる。
……と、僕は、絢辻さんのスキBESTを終えたその時。ごく当たり前のようにそう思っていて。絢辻さんが、アマガミの世界から、僕の世界に引き摺り出てきていたんだけど。そのことに、長く。もやもやしていた。言葉になかなかならなくて。とても長い時間がかかってしまったけれど。
ようやく書けたな、と。
アマガミをプレイしていて。たくさんの人と知り合う中で、気づいた。この感覚は別に僕だけの特別な感覚ではない。当たり前のように、彼女達は、プレーヤーの隣に、いる。恥じることなく言っていいのだ。
彼女は、僕と一緒になる運命だったんだ、と。
「アマガミは現実」とは、僕にとっては、そういうこと。
くどいけど、別にそれは絢辻さんである必然性は、当然ない。
ただ、絢辻さんが放つメッセージが、一番ストレートではあると思う。
そして。愛してる。その気持ちだけで、たとえ世界が終わっても、今を作っていける。確信に満ちた、マイラバの「DESTINY」が、僕にとって、絢辻さんの、スキBESTの「ぼくうた」であって。
僕の見解として、はっきりと。
絢辻さんが、アマガミのメインヒロインだ。
そう書き残しておきたいと思う。
絢辻さんのスキBESTこそが。
僕にとって、アマガミを体現しているんです。
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